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経済記者から見えた「ブランディングの学び」
2019/07/12 カテゴリー: Column
相馬留美/雑誌記者/フリーランス/現在は「週刊ダイヤモンド」「ダイヤモンド・オンライン」を中心に執筆中
「自分は一体何が好き?」と問いかける
今回、副業とパーソナルブランディングのためのサイト「コラボワークス」を立ち上げるにあたり、その作成過程での龍太さんが体験した様々な発見を共有していただきました!私は自宅からZOOMで参加させていただきましたが、ゆったりと流れる空気の中、自然とお話が始まりました。
龍太さんが「コラボワークス」のHPの立ち上げを考え始めたのは2017年末のこと。「ニューロン発想法」で有名なデザイン事務所Cauz 代表の芝哲也さんに相談をすると、「HPを作るなら、まずはブランディングでしょ?」と返されたのだとか。それがきっかけで、芝さんによる、ブランディングのためのワークショップが始まったそうです。
自分はどういうことに関心を持ち、どんなものが好きなのか。新規事業を立ち上げることも、パエリアを作ることも、モデレーターをやることも、全て自分の龍太さんの一部です。分人主義(平野啓一郎が提唱した「一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには『本当の自分』という中心はない」という、個人をさらに分解した考え方)で自分を考えたときに、「トップページに何を書いていいのかわからない状態だった」というところからスタートしたHP作りだったと龍太さんは言います。
たしかに、自分のことを紹介するのは難しいですよね。私なんて、Facebookやnoteのような短い自己紹介ですら、いつもいつも書くのを悩みますから、HPのような情報量の多いものだと、そもそも入り口で迷子になってしまう気持ちは痛いほどわかりました。
そんな龍太さんのブランディングの参謀(?)となったのが芝さんです。カナダでブランディングを学んだ芝さんは、ブランディングとは、「目には見えないけれど、顧客が頭の中に持つイメージを作り上げていくこと」と言います。そこには、理念と行動の一致が大切なのですが、これが難しいのだそう。一致させるための「約束」をずっと守っていくことが大切なのですが、「これをやったほうが儲かる」といった約束をたがえることをしてしまうと、ブランド価値は毀損するというわけです。
このブランドの作り方は、起業でも個人でも同じ。というわけで、芝さんの「ブランディングエクササイズ」と受けることで、「龍太さんにとって大事なものを見つけていく」ということになります。
しかし、そのエクササイズはなかなかの分量! ですので、当日は
・「○○○(個人名でも商品名でも、何でもOK)を表す3つのキーワード」
・「○○○の三つの性格・主義主張・趣向」
を各5分ずつで出していくワークショップを行っていただきました。
ちなみに、龍太さんのキーワードは、「好き」「信頼」「生態系」だったそうです。あー、なんだかイメージ通り……。これがブランドの軸になるわけですね。私もやってみましたが、うーんとうなりつつ、自分の内面にある言葉を探すのは新鮮でした!
そうして生まれたコラボワークスのサイトでは、浮かんでいる円をクリックすると、コンテンツの内容が見えるようになっています。龍太さんの「好き」を核にした分人が浮かんでいるわけです。
こうしたこだわりをサイトに反映できるのは、初めにブランディングについて徹底的にまとめているから。実は、この手法は日本ではあまり使われていないそう。確かに日本だと、「この予算で出来そうなのはどの程度か」というところからサイト構築をスタートすることも多いですが、不満の残る出来になることもあります。これは、初めにブランディングを考えていないことがそもそもの問題なのでしょう。この手法はとても理にかなっているなあと感じました。
「パエリアワークショップ」はなぜボツになったのか
そして、サイトとともにとても大切なのが、そのサイトを作り上げるテキストです。エディットブレイン 代表 上野郁江さんは、そうした“その人らしさ”を引き出すテキストのプロフェッショナル! 「龍太さんならこういう言い方はしない」というように、まるでその人が憑依したかのように言葉を紡いでいきます。
たとえば、「ムービー撮影」というコンテンツも、龍太さんをイメージして「飾らないムービー撮影」という書き方に。また、パエリアが得意な龍太さんは、初めは「パエリアワークショップ」というコンテンツを思いついていたそうですが、インパクトの割に何をするのかよくわからないので、「本格パエリア料理教室」にしたのだそう。「龍太さんならこう言いそう」という言葉を慎重に選び、コラボワークスの世界観をテキストで実現しています。
言葉選びのセンスはもちろん、本人の発言の意図を注意深く読み取り、成り代わって本人のように言葉を選ぶというのは、並大抵ではできない職人技です。その芸術的なワザをお聞きできるなんて感激でした!
苦労したのは、HPのテスト版を作ったのを見て、「『なんか違う』と龍太さんが言い出した時」と芝さんは苦笑。ローンチ予定より遅れても納得のいくものを作りたいとチームで練り直したとのこと。そうした積み重ねが、独創性がありつつ、“龍太さんっぽい”、多様性を感じるサイト作り、そしてブランディングにつながっているというわけだったんですね。
自身のサイト作りだけでなく、自分自身のブランディングにも生かせる気づきにあふれたイベントでした。
龍太さん、芝さん、上野さん、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
(相馬留美)