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なぜマイクロソフトがサイボウズを攻略できなかったか⁉️
2019/08/28 カテゴリー: Column
私が、マイクロソフトの中小企業部門で新規事業の開発に当たっていた2000年ごろのこと…。中小企業市場の攻略のための奇策として企画された、「マイクロソフトの独自グループウェア開発・販売プロジェクト」。その製品名は “GroupBoard”。そのプロジェクトに身を置いていた自分が、今、サイボウズにいる!不思議な縁だ。このプロジェクトの結果をいうと、2001年に初陣をして以来、4回も戦いを挑んだが敗退。2007年に出した「GroupBoard Workspace 2007」を最後に世の中から姿を消した。なぜ、マイクロソフトという巨人がサイボウズを駆逐できなかったのか。サイボウズからみた当時のマイクロソフトを備忘録的に振り返ってみた。
中小企業攻略としてのイケイケプロジェクト!
私は、2001年当時、マイクロソフトのスモールビジネスグループのビジネスアライアンスグループに所属していた。ここでの役割は、Small Business Serverを販売するパートナー開拓だ。すでに、開発側でプロトタイプが出来上がっていた “GroupBoard” をみた。見た目のデザインはマイクロソフトであるにもかかわらず、日本人的な洗練されたアイコンが実装されていた。「いい感じ!」とワクワクしながら、マイクロソフトのユーザーや販売店に、NDAを結びながら、ユーザビリティーテストをしていたことを思い出す!フィードバックも悪くはなかった。
サイボウズの中から見たグループウェア!
日本で利用企業数トップシェアの“サイボウズOffice”。当時の “GroupBoard”と比較しても、今でも、なんとなく野暮ったいデザイン。しかし、製品開発・サービスの奥底に流れているものが、企業理念だということがサイボウズの社員だからこそわかる。時間軸は少し違うものの「サイボウズあるところにチームワークあり」、「売上よりも利用者数」ということにこだわっていることが、当時、マイクロソフトいた自分には認識できなかった。そして、サイボウズ社員になって、その言葉が製品やサービスの隅々に宿っていることを知ることになる。「戦略は細部に宿る!」まさに、それの手本のようだ!その代表的な部分を披露すると、一見、最初の画面は、同じように見えるが、例えば、検索など何かアクションをする場合は、“GroupBoard”は、別ウインドウを起動する。一方、“サイボウズOffice”は、同じ画面で作業を進めていく多くのユーザーがシンプルに使える動きだ!
マイクロソフト時代に経験した失敗での学び
“GroupBoard”は、マイクロソフトのOfficeやWindows製品のバージョンアップに翻弄(苦笑)しながら、3回のバージョンアップをしたものの、サイボウズの足元にも及ばなかった。その主な要因は、以下だ!
・各種Windows製品をベースにした複雑なインストール
・製品の価格「ゼロ円」が引き起こした強みを生かせなかったチャネル販売
・ワールドワイドで最適化、体制が組み込めなかったサポート
自分がやっていたプロジェクトとしてマーケティング理論で見てもお粗末なものだ!しかし、この事例は、今も世界の企業のどこででも起きているアルアル。目の前もものしか見えなくなる視野…。俯瞰してみる余裕が大切だ。特に新規事業開発で起きるジレンマ。自分の企業の得意技術・製品を意識しすぎて、矛盾した戦略、その結果としてイノベーションが起きない問題。技術だけではないその企業の組織文化の強みにも目を向けて取り組むことが重要だ。